中国語版「松本清張 半生の記」を読んでみる②
香港人妻と暮らす、広東語歴15年のわたしです。
この前も取り上げましたが、再び 中国語版「松本清張 半生の記」を読んでみます。
この本は私の愛読書の一つですが、目に見えるところに置いていて、 語彙を増やしたいと思ったときなどに、ランダムにページをめくって、その部分の中国文と日本文を比較しています。
香港人妻は、同じ内容の本を中国語版と日本語版で各1冊もっているとお金の無駄だとかいろいろと言っていますが、わたしとしては、こういう外国語の比較が好きなので、どうしようもありません。わたしも正直なぜ好きなのかはわかりません。ただDNAがやれと言っているとしか答えようがない。
それは良いとして、以下引用します。
p.93
前に、京城の古本屋をのぞいたことがあると書いたが、私はそこで中学三年くらいの英語の古教科書を買い、軍服の下に忍ばせて内務班に持ち帰った。それを医務室の庭の、誰もないところでこっそりひろげた。これは何も私に向学心があったからではない。こういうものでも見ていないと生きていられないような気がしたからだ。小説の類いは、自由な社会への絶望的な誘惑に駆られて、かえって暗澹となりそうなので、一切眼を閉じていた。英語の本だとそんな現実感は起こらない。独房に入った者が語学をやる心理であった。
p.134
前面提到、我逛過京城的舊書店。我曾在那裡買了一本中學三年級的舊英文課本、藏在軍服下偷偷地帯回内務班。一有機会就躲在医務室的庭院角落悄悄地閱讀。這樣做並不表示我很學、而是因為我若不看書總覺得活不下去。然而、閱讀小說卻會激起我更渇望投入與之無縁的自由社會、反而心情沮喪、所以我不敢看小說。閱讀英文課本、就不會興起這種現實感。這跟獨居房的囚犯學習語言的心理是一様的。
偷偷地
tau1 tau1 dei6
こっそりと
これと同じ意味で、ともに会話内でよく使うのは
靜雞雞
zing6 gai1 gai1
こっそりと
上の引用文内では、「偷偷地」で使われていますが、香港人妻によると、書き言葉(書面語)としては、これは使うことはない、ということです。
その代わりに、次の文で出てくる「悄悄地」が書き言葉(書面語)として使われるそうです。
「悄悄地」は普通語ですが、香港人が文章を書く際には、これを「偷偷地」の代わりに使うということです。
これは私の憶測ですが、おそらく翻訳者は、「偷偷地」と「悄悄地」と使うことで、同じ表現の重複を避けたのでしょう。
このように中国文と日本文を比較していろいろと想像していくのは面白いです。
以上
#広東語