広東語版 中村文則「掏摸」を読んでみる
香港人妻と暮らす、広東語歴15年のらくだです。
日本の現代作家の作品も、多数中国語に翻訳されています。先日の松本清張「半生の記」と同じく、ほとんどが台湾で出版され、香港に輸入されてきています。
「掏摸」
中村文則著
葉韋利譯
厳密に言うと、「掏摸」の広東語版というより、台湾の中国語版ですが、読書人口が少ない香港では、出版される本も少ないため、台湾からの輸入本が多い。
しかし、文字は繁体字であるため、読む分には問題はない。
少し引用します。
p.47
到了深夜一點,
我們坐上休旅車,在車子𥚃換衣服。穿上莫名合身的衣服,傳來一陣噁心的体臭。那幾個男人掀開車內地板的墊子,露出一塊黑色板狀上蓋,𥚃面是中空的。「日本刀就放在這邊的座椅𥚃面。」高大男把衣服塞進地板間的空洞𥚃,一邊說。「連毒品也是,什麼都在𥚃面。連人也放得進去。」
深夜の一時になり、ワゴンに乗った。中で着替えをし、なぜかサイズの合う服に身体を通すと、苦い体臭がした。男達が車の床のシートを外すと、板状の黒い蓋があり、中が開いた。「日本刀は、こっちの座席の中にある」背の高い男が、床の空洞に服を入れながら言った。「麻薬でも、何でも入る。人間を入れることもできる」
「ワゴン車」を「休遊車」という中国語にしていますが、これは広東語では「七人車」というでしょう。文字通り七人乗りの車なのでこう呼びます。
「麻薬でも、何でも入る。人間を入れることもできる」
この部分が、
「連毒品也是,什麼都在𥚃面。連人也放得進去。」
と中国語に翻訳されています。
この文章だと、「麻薬でも、何でも中に入っている。人間も入れることができる」となり、実際に中に麻薬などが入っているという意味になってしまい、日本語文とは異なる意味になってしまいます。
おそらく日本語の文章通りに中国語化すると、
「連毒品也是,什麼都放得進去。連人也是。」
がしっくりくると思います。
こうやって日本文と中国文を比較しながらいろいろと考えるのが面白いです。
以上
#広東語